ピアノ入門書の定番

『バイエル』vs 『メトードローズ』

 

  

 

『バイエル』ってそもそもいつ誕生したかご存知ですか?

 

『バイエル』はドイツの作曲家フェルディナント・バイエル(Beyer,Ferdinand 1803-1863)

によって18世紀の後半に誕生したものなのです。

 

今の時代、易しいことから順に、子供の発達段階に応じた指導が、

当たり前になっているのですが、当時はまだそのような思想が定着していなかったのです。

 

当時の封建的、権威主義的な思想を否定し、人間らしい

人間の自然の法則に従って生きることの必要性を説いたのが

フランスの思想家『ルソー』(1712〜78)です。

 

そして彼の手にによって、

子供の発育に応じて身体や知性、感覚などを訓練する必要性を指示したのでした。

この教育思想に影響を受けたのがスイスの教育者『ペスタロッチ』(1746〜1827)

という方です。

 

『ペスタロッチ』自身は音楽の専門家ではなかったのですが、彼の弟子であった

音楽教師の『プファイファー』や『ネーゲリ』がペスタロッチの思想を受け継ぎ

音楽の指導法を考案し、やがてドイツの作曲家、フェルディナンド・バイエルによって

『バイエルピアノ教則本』が誕生したのです。

 

このペスタロッチの思想、易しいことから順に難易度が高くなることは

無理なくピアノの基礎を学べるということになり、

当時、ピアノを習う子供達にとっても指導する方たちにとっても

画期的な本だったのだろうと思います。

これは、いまの時代にも受け継がれていて、特に小さな子供がピアノを習うとき

易しいことから順番に難易度をあげていくという指導法はとても大切です。

 

いまでは、より分かりやすくするためにバイエルの内容を更に細分化した教材、

また、他の子供向け、大人向けの教材でもバイエルに出てくる練習曲を抜粋して取り上げていたり

ピアノを弾く上でバイエルは切っても切り離せない関係といえるでしょう。

 

 

このバイエルと同じ時代に作られたもう一つの教則本があるのです。

 

『メトードローズピアノ教則本』

というものですが、本の中の曲にもフランス民謡が入っていたり、

フランスの伝統音楽や感性を養っていこうというのがねらいだったようです。

 

『メトードローズ』という名前、直訳すると『バラの本』!ということになりますが、

表紙の挿絵にもバラがついているんですよ。

『バラの本』って何かバラの香りがしそうで、一見ピアノ教則本には見えないような

ネーミングですよね?でもいかにもフランスの香りのしそうな優雅なネーミングです。

 

私もピアノを習って初めて出会ったのがこの『メトードローズ』でした。

 

思い出の本棚にも私が使って汚くなってしまった楽譜ですが、載ってますので

見てみてください。新品の楽譜と比較するとちょっと恥ずかしいほど汚くなって

しまいましたが・・・(バ、バラが薄汚れてます)・・・ネンキが入っていますよ!

 

バイエルはドイツの伝統音楽を目指して作られた教則本に対して

メトードローズはフランスの伝統音楽を目指して作られた教則本なのです。

 

この2つの教則本には難点もあります。

 

2つの教則本が作られた、18世紀後半という時代、ピアノが誕生してまだ間もない時代でした。

当時のピアノはいまのようなタッチ(弾いた時の感触)や音量を出せる楽器ではなく

ハープシコード(チェンバロ)に近い楽器だったのです。

 

この当時のピアノ(鍵盤楽器)の弾き方というのは指の関節を曲げて、高く上げてから

鍵盤を弾く『フィンガー奏法』といわれるものでした。

 

この奏法でいまのピアノを弾くと弾力性のない硬い音しかでないので

現代のような音量、様々な音色を出せるピアノの奏法には不向きでなのです。

したがってこの時代に作られた教則本は、現代のピアノの弾き方の基礎には合わないのです。

 

 

いまの奏法というものは、『フィンガー奏法』の逆の弾き方なのです。(重力奏法)

 

ちょうどマウスに手を乗せたときぐらいの手の形で、指の付け根(第三関節)だけを

使って、鍵盤を弾く弾き方なのです。

 

この、手の自然な形で、無駄なところに力を入れない弾き方だと、音の強弱(ダイナミクス)

や、音色、音で表現する感情表現などが意のままにできるのです。

あの有名なショパンは早くからこの奏法でピアノを弾きこなしていたため

彼の弾くピアノの音色は、素晴らしく、聴衆を魅了していたと、言い伝えられているんですよ。

 

楽器の向上に伴ってその奏法も時代とともに変わってきたのです。

このフィンガー奏法の時代に作られた、『バイエル』『メトードローズ』はこのような

難点もあることをお忘れなく。

 

しかし、いまも昔も人気があるのは先ほどもいいましたが

『ペスタロッチ思想』がいまの時代にも受け継がれているからだと思うのです。

小さな子供の場合、また大人の場合でも、“できる、わかる、簡単、”というのは

自信につながり、やる気へと導くのです。ピアノに限らず何事もそうではないでしょうか?

 

特に、大人になって趣味で楽しむためにピアノを始める場合、奏法も非常に大切ですが

ピアノの基礎を無理なく学ぶことができ、なお且つ“できることを増やす、弾けるようになる”

というのは最大の魅力ではないかと思います。

 

 

 

この他にもピアノ教則本は20世紀に入ってからもたくさん作られ、

バイエル、メトードローズに継いで人気の高い教則本といえば、

ハンガリーの作曲家、バルトークが書いた教則本『ミクロコスモス』や、

アメリカの作曲家バスティンの『バスティンピアノメソード』などがあります。

もちろん日本の作曲家の書いた教則本も数多くありますよ。

 

最近では、『大人のためのピアノ教則本』の数も増えてきています。

大人の方が始める場合、どうしても楽譜を読む「譜読み」がネックになったり

指が思うように動かないなどで悩む方が多くいらっしゃるので

大人のためのピアノ教則本では、よりわかりやすく詳しく説明されているのが特徴です。

 

 

バイエルでも大人用の教則本(全音)が出版されています。

この大人用は、上巻、下巻が一冊にまとめられ、コンパクトな形に編集されていますが、

子供用に比べると、音符の大きさが小さくなっています。

 

上巻の易しい曲などは、音符が小さくても、それほど気にならないのですが

下巻に進むと、シャープ(♯)フラット(♭)などの臨時記号が出てきたり、

音が5線の上よりも高くなったり、低くなったりするときに表す「加線」という線が増えるなど

楽譜に記してある情報が増えてくるので、譜読みに慣れていないと

読みづらい印象を受けてしまいます。

 

やはり、音符は大きい方が見やすいという方が多いです。

長時間ピアノを練習する場合、音符が大きい方が目が疲れなくて良いですし

バイエルを使うなら子供用を使ったほうが音符が見やすいのでオススメです!

 

 

でも、これらの教則本を使わずに好きな曲、弾いてみたい曲中心に上達したいと

考えているあなた、

 

たとえば、有名なベートーベンの『エリーゼのために』が弾けるようになるには

どうしたら良いのでしょうか?

 

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